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茶室をつくる
川崎君子建築事務所/川崎 君子
岡倉天心は「茶の本」のなかで
茶室は簡素にして俗を離れているから真に外界のわずらわしさを
遠ざかった聖堂である。
( 中 略 )
今日は工業主義のために真に風流を楽しむことは世界至るところ、
ますます困難になって行く。われわれは今までよりもいっそう茶室
を必要とするのではなかろうか。
と述べています。
「茶の本」は初め英文で明治39年に出版されたものですから、なんと96年前のことです。
天心が予想した「茶室を必要とする」理由が、今日のそれと合致しているかどうかは別にして、一般の人々が茶室という空間を求める時代が来た、と私は感じています。
茶室をつくるのは茶道の先生?
ここ数年、茶室をつくりたいという方がとても多くなりました。私のクライアントを大別すると、
1 茶道の先生として教えるため、茶室が欲しい
2 お茶を習っていて、先生になるつもりは無いけ れど自分の家に茶室が欲しい
3 茶道とは無縁だが茶室空間が好きなので‥‥
となっているのですが、最も多いのが2のクライアントです。お茶を学ぶなかで自分の家に茶室があったら気軽に家族や友人と楽しむことができる、というものです。また、3の場合は非日常空間として、癒しの場、リフレッシュを求めてということでしょうか。いずれにしても、茶室がストレスを抱えながらの日常に、やすらぎと心の豊かさを取り戻すための快適空間ととらえられてきたのだと思います。今までは茶室をつくるのはお茶の先生、と決まっていたのですが、この点が大きく変わってきていると思います。
小間と広間
茶室は四畳半を境に広間と小間に分かれます。
例えば1の建主さんならば広間と小間が欲しいところです。敷地や予算の関係でどうしても無理なら広間だけにせざるを得ませんが、この場合にも、例えば坪庭から廊下(できれば畳廊下)への上がり口をにじり戸風にして小間を使う作法も学べるような工夫が必要でしょう。また、玄関近くに二〜三畳の畳を敷いた寄付としての部屋がとれれば申し分ありません。
また、2と3の建主さんなら二畳台目か三畳台目をお勧めします。何といっても四畳半の茶室が最も一般的ですが、二畳台目・三畳台目は空間に変化があり、見た目にも美しい席です。茶室として成り立つ最も小さいものは一畳台目です。これは客座の一畳と点前座の台目一畳、つまり二畳に満たない広さの茶室ですが一般的とは言えません。
そして、広間としては居間や客間の和室を代用できるように考慮しておくと良いと思います。
小間をつくる
まず小間をつくる場合、必ず守って欲しいことの
一つ目は畳を京間畳にすることです。954×1909ミリの畳の寸法プラス柱寸法で部屋の芯芯寸法を決めます。京間にすることで、狭い空間での人の動きがとてもスムーズになります。また、茶道の道具類は京間畳を基準に作られていますので、京間でなくては使えないものもある訳です。ですからもちろん、広間も京間でつくるのが理想ですが、そうはいかない場合、点前座の畳の幅だけを954ミリにするという方法で良いでしょう。
小間の天井は基本的に掛け込み天井・平天井・落ち天井と3種類に変化をつけますが、必ずそうでなくてはいけないということではありません。また、北山丸太の垂木・黒部杉ヘギ板・フジヅル掛けの化粧野地といった本格的な材料を使わなくても掛け込み天井を造ることもできます。今までに柿渋紙また晒竹を使って小間の天井をモダンに構成したことがあります。
要は控え目で柔らかい雰囲気を出すことを基本に色々な材料で工夫してみることです。
写真は、今年1月にバーミンガムで開かれた国際家具展に二畳台目の茶室を出展しましたが、その時のものです。
美しい茶室を
建主さんからの希望として、よく「茶室まがいでいいんです」と言われるのですが、これは本格的な茶室にするには予算が足らないので‥‥という意味でしょうか。
材料や構成を新しくシンプルにして金額を抑える
ことは可能です。ただ、茶道としての作法がありますので、水屋との位置関係、茶道口と床の間や炉の切り方の関係、客の出入口の位置等々、絶対無視してはいけないことがたくさんあります。作法を知らずにプランニングした結果、逆勝手の席になってしまった例も聞きます(逆勝手の作法もあることはあるのですが‥‥)。また客も亭主も同一の出入口を使わざるを得ないプランだったり、客が水屋の前を通らなければ席に入れなかったり、席入りした客から水屋がまる見えだったりすることも避けたいことです。
出来上がったプランが送られてきて炉の位置だけ教えて欲しいと頼まれることがしばしばあるのですが、上記のことを全く無視してプランニングされていることが多く、この茶室は正式には使えません、と答えるしかなくなります。
以上のようなルールをクリアしていることが、茶室が成り立つ最低条件だと言えますが、それ以上に
重要なのは、その茶室が美しいものであるかどうか
ということだと私は考えています。
外の光のゆらめきが障子を通して内部に入り込ん
できます。小さな窓の配置が奏でる光のリズム、深い軒の出に包まれた安堵感、すべて絶妙なバランスが生み出す美しい茶室であるからこそ、精神の安らぎをもたらすものでしょう。
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